消火設備と警報設備【危険物乙4テキスト】
災害発生に備えて製造所等では、消火設備や警報設備を設置しておく必要があります。
ここでは消火設備や警報設備の種類や設置する基準などを解説します。
消火設備の種類
消火設備は第1種から第5種まで分かれており、それぞれ消火能力の大きさに違いがあります。
種別 | 消火設備 |
第1種 | 屋内消火栓 屋外消火栓 |
第2種 | スプリンクラー |
第3種 | 水蒸気消火設備 水噴霧消火設備 泡消火設備 不活性ガス消火設備 ハロゲン化物消火設備 粉末消火設備 |
第4種 | 大型消火器 |
第5種 | 小型消火器 乾燥砂 水バケツ 膨張ひる石 膨張真珠岩 |
第1種消火設備
第1種消火設備には消火栓が該当します。
下記画像は消火栓のイメージです。画像ではホースが見えていますが、通常は扉が閉まっているためホースは見えません。火災発生時は、このホースから水を噴射して消火活動を行います。
建物内に設置するものを屋内消火栓、建物の周囲に設置するものを屋外消火栓といいます。
屋内消火栓の設置基準 | その階の各部分から、ホース接続口までの水平距離は25m以下となるように設置。 |
屋外消火栓の設置基準 | 防護対象物の各部分から、ホース接続口までの水平距離が40m以下となるように設置。 |
屋内消火栓の使い方などが気になる方は以下の動画を見てみましょう!(操作方法までは危険物の試験では問われませんが・・)
第2種消火設備
第2種消火設備にはスプリンクラー設備が該当します。
下記写真はスプリンクラーヘッドといわれる部分で、火災発生時は炎の熱によって先端部分が溶けることで水を噴射して消火します。消火器や消火栓と違い、人の操作を必要としない点が大きな特徴です。
防護対象物の各部分から、スプリンクラーヘッドまでの水平距離が1.7m以下となるように設置しなければいけません。
スプリンクラー設備は水をスプリンクラーヘッドまで運ぶための配管やポンプなど、複数の設備で構成されています。(危険物の試験では問われませんが・・。)
第3種消火設備
第3種消火設備は種類が多く、以下のようなものがあります。
- 水蒸気消火設備
- 水噴霧消火設備
- 泡消火設備
- 不活性ガス消火設備
- ハロゲン化物消火設備
- 粉末消火設備
それぞれ防護対象物の火災を有効に消火できるように設置します。
第3種消火設備はほぼ出題されないため読み飛ばしてもOKです。
第4種消火設備
第4種消火設備には、下記写真のような車輪付きの大型消火器が該当します。
大型消火器は、防護対象物の各部分から消火設備に至る歩行距離が30m以下となるように設置しなければいけません。
第5種消火設備
第5種消火設備は種類が多く、以下のようなものが該当します。
- 小型消火器
- 乾燥砂
- 水バケツ
- 膨張ひる石
- 膨張真珠岩
なお、第5種消火設備は製造所等の種類によって設置基準が異なります。
地下タンク貯蔵所 簡易タンク貯蔵所 移動タンク貯蔵所 給油取扱所 販売取扱所 | 有効に消火することができる位置に設置。 |
上記以外の製造所等 | 防護対象物の各部分から消火設備に至る歩行距離が20m以下となるように設置。 |
消火設備の選定基準
設置する消火設備は、対象となる製造所等の規模や危険物の種類、指定数量の倍数などから消火の難しさを3つに分類し、それぞれ設置するべき消火設備の種類が決められています。
消火の難しさ | 消火設備 | |||||
第1種 | 第2種 | 第3種 | 第4種 | 第5種 | ||
著しく消火が困難 | いずれか1つを設置する | 必ず設置する | 必ず設置する | |||
消火困難 | – | – | – | 必ず設置する | 必ず設置する | |
その他 | – | – | – | – | 必ず設置する |
著しく消火が困難な施設では第1種から第3種のうちいずれか1つと、第4種・第5種消火設備の両方を設置しなくてはいけません!
消火設備の選定基準の例外
地下タンク貯蔵所、移動タンク貯蔵所、簡易タンク貯蔵所、第一種販売取扱所は、施設の規模や貯蔵・取り扱う危険物の数量に関わらず、第5種消火設備だけを設置すれば良いという決まりがあります。
所要単位と能力単位
その施設に必要な消火設備の消火能力を決めるための基準として、所要単位と能力単位があります。
所要単位とは、製造所等の種類、構造、面積、扱う危険物などから、その施設にどれだけの消火能力が必要かを計算するための基準です。
また、能力単位とは、その消火設備がもつ消火能力を数値化したものです。
製造所等には、所要単位以上の能力単位をもつ消火設備を備えておかなければいけません。
先ほどの消火設備の選定基準と混同しそうですが、全く別の考え方です。
選定基準はスプリンクラーや消火器など、設置する消火設備の種類を決める基準ですが、所要単位は必要な消火器の個数などを決めるための基準となっています。
以下の表は、製造所等の種類、構造、面積から所要単位を算出するための基準です。
製造所等の区分 | 1所要単位当たりの数値 | ||
製造所、取扱所 | 耐火構造 | 面積100㎡ | |
非耐火構造 | 面積50㎡ | ||
貯蔵所 | 耐火構造 | 面積150㎡ | |
非耐火構造 | 面積75㎡ | ||
屋外の貯蔵所等 | 外壁が耐火構造で、かつ水平最大面積を建坪として上記の基準にあてはめ算出する |
また、扱う危険物に関しては、指定数量の10倍を1所要単位とします。
「製造所等の種類、構造、面積」から算出した値と、「危険物の種類」から算出した値を合算したものが、その製造所等における所要単位となります。
例えば、延べ面積500㎡の耐火構造の製造所で、ガソリンを3,000ℓ貯蔵した場合の計算は以下のようになります。
耐火構造の製造所の1所要単位あたりの面積は100㎡なので、500[㎡]÷100[㎡]=5
「製造所等の種類、構造、面積」から算出した値は5になります。
次に、ガソリンの指定数量の倍数は200ℓなので、2,000[ℓ]÷200[ℓ]=10
指定数量の10倍を1所要単位とするため、危険物の種類から算出した所要単位は1になります。
それぞれの数値を合算した値が最終的な所要単位となりますので、この場合は5+1で所要単位は6となります。
所要単位以上の能力単位を有する消火設備が必要になりますので、この製造所では、能力単位が6以上の消火設備が必要になるということです。
電気設備の消火設備
電気設備に対する消火設備は、電気設備のある場所の面積100㎡ごとに、第5種消火設備を1個以上設ける規定になっています。
危険物の種類に応じた消火設備
危険物は種類に応じて消火方法が違います。
消火設備 | 建 築 物 そ の 他 の 工 作 物 | 電 気 設 備 | 第1類 危険物 | 第2類 危険物 | 第3類 危険物 | 第4類 危険物 | 第5類 危険物 | 第6類 危険物 | ||||||
ア ル カ リ 金 属 の 過 酸 化 物 | そ の 他 | 鉄 粉 ・ 金 属 粉 ・ マ グ ネ シ ウ ム | 引 火 性 固 体 | そ の 他 | 禁 水 性 物 品 | そ の 他 | ||||||||
第1種消火設備 屋内・屋外消火栓 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||
第2種消火設備 スプリンクラー | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||
第 3 種 消 火 設 備 | 水蒸気・水噴霧消火設備 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
泡 消火設備 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
不活性ガス 消火設備 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
ハロゲン化物 消火設備 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
粉末消火設備 | リン酸塩類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
炭酸水素塩類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
その他 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
第 4 種 ・ 第 5 種 消 火 設 備 | 水消火器 | 棒状 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
霧状 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
強化液消火器 | 棒状 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
霧状 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
泡消火器 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
二酸化炭素消火器 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
ハロゲン化物消火器 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
粉末消火器 | リン酸塩類等 | ○ | 〇 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
炭酸水素塩類等 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
その他 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
第5種消火 設備 | 水バケツ・水槽 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
乾燥砂 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
膨張ひる石 膨張真珠岩 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
この表を全部覚えるのは不可能なので、以下のポイントだけおさえておきましょう。
・乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩はすべての危険物に適応
・水や泡を用いる消火設備は電気設備に使えない
・第4類危険物に水系消火器は使えない(第4類危険物は水より軽いため、水に浮いた危険物が原因で火災が広がるから)
警報設備
指定数量の倍数が10以上の危険物を貯蔵、取り扱う製造所等(移動タンク貯蔵所を除く)では、火災発生時に自動的に作動する警報設備を設けなくてはいけません。
警報設備の種類には以下の5つがあります。
- 自動火災報知設備
- 消防機関に報知できる電話
- 非常ベル装置
- 拡声装置
- 警鐘
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