殺虫剤には、有機リン剤、ピレスロイド剤、昆虫成長制御剤、忌避剤などがあります。
それぞれの特徴と代表的な薬剤について紹介します。
有機リン剤
有機リン剤は、リンを含む有機化合物で、主に殺虫剤として使用される農薬の一種です。神経毒性を持つため、昆虫の神経系に作用し殺します。
隙間に隠れている昆虫を追い出すような効果(フラッシング効果)はありませんが、少量でも致死率が高く、ノックダウンしたあとはそのまま死亡することが多いです。
以下は、試験で出題されたことがある有機リン剤の種類と特徴です。
- ダイアジノン
- マイクロカプセル製剤がある
- フェニトロチオン
- 対称型有機リン剤
- マイクロカプセル製剤がある
- プロペタンホス
- 非対称型有機リン剤
- マイクロカプセル製剤がある
- ジクロルボス
- 樹脂蒸散剤がある
マイクロカプセル製剤とは、有効成分を微小なカプセルで包み込んだ製剤のことです。あらかじめ害虫が生息していそうな場所に散布しておくことで、時間差で害虫がマイクロカプセルに触れるとカプセルが割れて薬剤が放出されます。害虫が触れない限り、マイクロカプセルはそのまま残るので、持続的な効果が期待できます。
また、樹脂蒸散剤とは、殺虫成分を樹脂に練り込み、蒸散させることで、ハエや蚊、ゴキブリなどの害虫を駆除する薬剤のことです。殺虫プレートなどが有名で、密閉された空間に吊り下げておくだけで、殺虫成分が広がって行き害虫を駆除します。
ピレスロイド剤
ピレスロイド剤とは、除虫菊に含まれる天然殺虫成分「ピレトリン」に似た構造を持つ合成化合物の総称です。速効性があり、多くの昆虫に対して殺虫効果を発揮します。
隙間に隠れている昆虫を追い出すような効果(フラッシング効果)があり、散布すると短時間で害虫の大部分をノックダウンさせますが、一部は蘇生することがあるため、致死率は有機リン剤と比べると低いです。
魚類に対しても毒性が強いため、魚を飼育している場合は使用に注意が必要です。
以下は、試験で出題されたことがあるピレスロイド系薬剤の種類と特徴です。
- メトフルトリン
- 常温でも揮散し、主に蚊の駆除(香取マットなど)に使用される
- フェノトリン
- シラミ用として人体に直接使用できるシャンプーがある
- 水性乳剤はULV処理(少量の高濃度殺虫剤を微粒子にして空間に散布)専用として使われ、屋内のハエや蚊の防除に使用される
- 有効成分を液化炭酸ガスに溶解し、高圧ガス容器に封入した炭酸ガス製剤としても使われる
- イミプロトリン
- 超速効性があり、主に殺虫スプレーとして使われる
- トランスフルトリン
- 常温でも揮発する性質を持ち、蚊やハエなどの不快な飛ぶ虫を寄せ付けない効果がる
- ペルメトリン
- 水性乳剤をULV機で散布して使うことで追い出し効果が期待できる
- エトフェンプロックス(厳密にはピレスロイドではない)
- ピレスロイド系と似た特徴をもつ薬剤で安全性が高く、ハエやゴキブリなどの駆除に使用される
昆虫成長制御剤(IGR)
昆虫の成長や発育を制御する薬剤のことで、昆虫の脱皮や変態を阻害して殺虫効果を発揮させるため、蚊やハエなど成長の過程で幼虫から成虫へ変態するタイプの昆虫に効果的です。
従来の神経系に作用する殺虫剤とは異なり、昆虫特有の生理的な働きに作用するため、人畜への影響が少ないのが特徴です。
以下は、試験で出題されたことがある昆虫成長制御剤の種類と特徴です。
- ピリプロキシフェン
- 蛹化(サナギになること)や羽化を阻害する
- メトプレン
- 蛹化(サナギになること)や羽化を阻害する
- ジフルベンズロン
- 脱皮後の表皮形成を阻害する(脱皮を失敗させる)
忌避剤
忌避剤とは、昆虫を寄せ付けないようにするための薬剤のことです。主に、人体に塗布する虫除けスプレーや、家屋の周りに撒く粒剤などがあります。
以下は、試験で出題されたことがある昆虫成長制御剤の種類と特徴です。
- イカリジン
- 蚊やマダニなどの吸血害虫を寄せ付けない効果のある虫よけ成分です。
- ディート
- イカリジンよりも広範囲の虫に効果がある忌避剤です。
その他の殺虫剤
これまで紹介したものに該当しない殺虫剤です。
- ブロフラニリド
- ピレスロイド系や有機リン系の薬剤に耐性をもった昆虫のために新たに開発された薬剤
- ゴキブリ、トコジラミなどに有効
- フィプロニル、ホウ酸、ヒドラメチルノン
- ゴキブリ用の毒餌製剤として利用されている
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