ビル管理士 2022年(R4年) 問65  過去問の解説【空気環境の調整】

内容に誤りがあった場合は、お手数ですがコメント欄で教えて頂けると助かります。

問題

デシカント空調方式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.除湿量は、再生空気の相対湿度の影響が大きい。
2.放射冷暖房システムの結露対策としても用いられる。
3.除湿において、デシカントロータ通過前後で外気の乾球温度は低下する。
4.2ロータ方式において、再生熱交換器は排気側に設置される。
5.潜熱と顕熱を分離して制御できる空調システムである。

回答と解説動画

正解は(3)

デシカント空調方式は、温度(顕熱)と湿度(潜熱)を分離して制御できる省エネ型の空調システムです。従来の空調(冷却除湿方式)は、空気を過冷却して水分を結露させて除湿し、その後再加熱するためエネルギー効率が悪くなりがちですが、デシカント空調はこの課題を解決します。

問題の解説の前に、デシカント空調の仕組みを簡単に説明します。
下図は、2ローター式のデシカント空調機です。

出典:環境科学研究所
  1. 外気の取り込み
     外から取り入れた空気(緑の矢印)は、まず「デシカントローター」に通されます。
  2. デシカントローターで除湿
     デシカントローターは、シリカゲルやゼオライトなどの乾燥剤を含んだ回転体です。
     ここを通ることで、空気中の水分が乾燥剤に吸着され、乾燥した空気(オレンジの矢印)になります。
     このとき、吸着熱の影響で空気の温度はやや上昇します。
  3. 顕熱交換ローターで熱交換
     乾燥した空気は、次に「顕熱交換ローター」を通ります。
     ここで室内からの還気と熱交換し、空気の温度を調整します。
     これにより、室内に送り込む空気(快適空気:青矢印)が適温・適湿になります。
  4. 快適空気を室内へ供給
     調整された空気が室内へ送られます。(必要に応じて冷却器などで空気を冷却する)
  5. デシカントローターの再生(乾燥剤のリフレッシュ)
     一方、デシカントローターに吸着された水分は、ローターが回転して「再生側」に移ることで、加熱された空気(赤い矢印:空気加熱器や排熱・太陽熱を利用)によって水分が蒸発し、乾燥剤が再び使える状態に戻ります。

問題の解説

1. 除湿量は、再生空気の相対湿度の影響が大きい。
→ 正しい
デシカント空調では、乾燥剤(デシカントロータ)が空気中の水分を吸着して除湿しますが、吸着した水分は「再生側」で加熱した空気(再生空気)によって乾燥剤から追い出し、乾燥剤をリフレッシュ(再生)します。
このとき、再生空気の相対湿度が低いほど、乾燥剤から水分が効率よく放出されるため、乾燥剤の再生効率が高まり、次の除湿サイクルで多くの水分を吸着できるようになります。

2. 放射冷暖房システムの結露対策としても用いられる。
→ 正しい
デシカント空調は除湿能力が高く、放射パネルの結露防止に効果的です。
※放射冷暖房のデメリットの一つにパネル表面の結露があります。

3. 除湿において、デシカントロータ通過前後で外気の乾球温度は低下する。
→ 不適当
デシカント空調方式では、デシカントロータ(乾燥剤ロータ)を通過する際に、空気中の水分が乾燥剤に吸着されて除湿されます。このとき、吸着反応は発熱反応なので、空気は水分を失う(乾燥する)と同時に、温度(乾球温度)が上昇します

4. 2ロータ方式において、再生熱交換器は排気側に設置される。
→ 正しい
排気側の熱を再利用するため、再生熱交換器は排気側に配置されます。

デシカント空調方式では、乾燥剤(デシカント)が空気中の水分を吸着して除湿します。しかし、乾燥剤は水分を吸着し続けると飽和してしまうため、再生(吸着した水分を放出して元の乾燥状態に戻す)工程が必要です。
この再生のためには、乾燥剤を加熱して水分を飛ばす必要があります。
そこで、再生熱交換器を排気側に設置することで、建物から出ていく排気の熱を、乾燥剤の再生(加熱)に利用できるようになります。

5. 潜熱と顕熱を分離して制御できる空調システムである。
→ 正しい
デシカントロータで潜熱(湿度)を処理し、別途顕熱(温度)を調整する分離制御が可能です。

解説動画

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次