問題
デシカント空調方式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1. | 除湿量は、再生空気の相対湿度の影響が大きい。 |
2. | 放射冷暖房システムの結露対策としても用いられる。 |
3. | 除湿において、デシカントロータ通過前後で外気の乾球温度は低下する。 |
4. | 2ロータ方式において、再生熱交換器は排気側に設置される。 |
5. | 潜熱と顕熱を分離して制御できる空調システムである。 |
回答と解説動画
正解は(3)
問題の解説の前に、デシカント空調の仕組みを簡単に説明します。
下図は、2ローター式のデシカント空調機です。
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- 外気の取り込み
外から取り入れた空気(緑の矢印)は、まず「デシカントローター」に通されます。 - デシカントローターで除湿
デシカントローターは、シリカゲルやゼオライトなどの乾燥剤を含んだ回転体です。
ここを通ることで、空気中の水分が乾燥剤に吸着され、乾燥した空気(オレンジの矢印)になります。
このとき、吸着熱の影響で空気の温度はやや上昇します。 - 顕熱交換ローターで熱交換
乾燥した空気は、次に「顕熱交換ローター」を通ります。
ここで室内からの還気と熱交換し、空気の温度を調整します。
これにより、室内に送り込む空気(快適空気:青矢印)が適温・適湿になります。 - 快適空気を室内へ供給
調整された空気が室内へ送られます。(必要に応じて冷却器などで空気を冷却する) - デシカントローターの再生(乾燥剤のリフレッシュ)
一方、デシカントローターに吸着された水分は、ローターが回転して「再生側」に移ることで、加熱された空気(赤い矢印:空気加熱器や排熱・太陽熱を利用)によって水分が蒸発し、乾燥剤が再び使える状態に戻ります。
問題の解説
1. 除湿量は、再生空気の相対湿度の影響が大きい。
→ 正しい
デシカント空調では、乾燥剤(デシカントロータ)が空気中の水分を吸着して除湿しますが、吸着した水分は「再生側」で加熱した空気(再生空気)によって乾燥剤から追い出し、乾燥剤をリフレッシュ(再生)します。
このとき、再生空気の相対湿度が低いほど、乾燥剤から水分が効率よく放出されるため、乾燥剤の再生効率が高まり、次の除湿サイクルで多くの水分を吸着できるようになります。
2. 放射冷暖房システムの結露対策としても用いられる。
→ 正しい
デシカント空調は除湿能力が高く、放射パネルの結露防止に効果的です。
※放射冷暖房のデメリットの一つにパネル表面の結露があります。
3. 除湿において、デシカントロータ通過前後で外気の乾球温度は低下する。
→ 不適当
デシカント空調方式では、デシカントロータ(乾燥剤ロータ)を通過する際に、空気中の水分が乾燥剤に吸着されて除湿されます。このとき、吸着反応は発熱反応なので、空気は水分を失う(乾燥する)と同時に、温度(乾球温度)が上昇します。
4. 2ロータ方式において、再生熱交換器は排気側に設置される。
→ 正しい
排気側の熱を再利用するため、再生熱交換器は排気側に配置されます。
5. 潜熱と顕熱を分離して制御できる空調システムである。
→ 正しい
デシカントロータで潜熱(湿度)を処理し、別途顕熱(温度)を調整する分離制御が可能です。
解説動画
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