ビル管理士 2020年(R2年) 問30  過去問の解説【建築物の環境衛生】

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問題

アスベストに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.自然界に存在する繊維状の水和化したケイ酸塩鉱物の総称である。
2.過去には断熱材として使用された。
3.吸引すると肺の線維化を生じさせる。
4.健康障害は、アスベスト製品製造工場の従業員に限られる。
5.悪性中皮腫の原因となる。

回答と解説動画

正解は(4)

1.自然界に存在する繊維状の水和化したケイ酸塩鉱物の総称である。
→正しいです。
アスベスト(石綿)は、自然界に産出する繊維状の水和化したケイ酸塩鉱物の総称です。
クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)など6種類があり、いずれも地中から採掘される天然鉱物です。
その繊維の細さは髪の毛の5000分の1程度ともいわれ、非常に軽くて空中に舞いやすい性質があります。

2.過去には断熱材として使用された。
→正しいです。
アスベストは耐熱性・断熱性・耐薬品性・絶縁性に優れていたため、20世紀半ばまで建築物の断熱材、防火材、吹付け材、配管の保温材など、さまざまな用途で大量に使用されてきました。
特にビルや学校、病院などの大規模建築物では、吹付けアスベストやスレート板などが多く使われており、現在も古い建物にはアスベスト含有建材が残っています。

3.吸引すると肺の線維化を生じさせる。
→正しいです。
アスベスト繊維は非常に細く、吸い込むと肺の奥深く(肺胞)まで到達します。
体内に入ったアスベストは排出されにくく、慢性的な炎症を引き起こし、やがて肺組織が線維化(硬くなる)して「アスベスト肺(石綿肺)」という職業性じん肺疾患を発症します。
この病気は進行性で、咳や息切れ、呼吸困難などの症状が現れ、重症化すると日常生活に大きな支障をきたします。
また、アスベスト肺は他の肺疾患やがんのリスクも高めます。

4.健康障害は、アスベスト製品製造工場の従業員に限られる。
不適当です。
アスベストによる健康障害は、製造工場の従業員だけでなく、建設現場や解体現場の作業員、アスベストを含む建材の取り扱いに関わった人、さらには周辺住民や家族(衣服などを介した家庭内曝露)にも発生しています。
例えば、建物の解体工事やリフォーム時にアスベスト粉じんが飛散し、作業者や周囲の人が吸い込むことで健康被害が起きています。
このように、アスベストの健康被害は「工場従業員に限られる」というのは明らかな誤りです。

5.悪性中皮腫の原因となる。
→正しいです。
悪性中皮腫は、胸膜(肺を包む膜)や腹膜、心膜などにできる悪性腫瘍で、アスベスト曝露が唯一の明確な原因とされています。
アスベスト繊維が体内に入ると、数十年(20~50年)という長い潜伏期間を経て発症することが多く、診断時には進行していることが多いため、予後が非常に悪いのが特徴です。

アスベストが原因の健康被害:アスベスト肺(じん肺)、肺がん、悪性中皮腫

解説動画

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