ビル管理士 2020年(R2年) 問96  過去問の解説【建築物の構造概論】

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問題

建築物とその構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.鉄筋コンクリート構造の店舗建築の法定耐用年数は、39年である。
2.既存不適格建築物とは、法が適用された時点で既に存在していた建築物のうち、その後の改正規定に適合していない建築物をいう。
3.免震構造には、アイソレータを用いて地盤から建築物を絶縁する方法がある。
4.鉄筋コンクリート構造における鉄筋の腐食は、主にコンクリートのひび割れや中性化に起因する。
5.構造設計に用いる鋼材の許容応力度は、引張強さを基準にして算出される。

回答と解説動画

正解は(5)

1.鉄筋コンクリート構造の店舗建築の法定耐用年数は、39年である。
→正しい
鉄筋コンクリート造(RC造)の法定耐用年数は、建物の「用途」によって異なり、住宅用なら47年、事務所用なら50年、店舗用は39年と定められています。
これは、減価償却費を計算する際の基準となる年数で、建物の実際の寿命とは異なります。

2.既存不適格建築物とは、法が適用された時点で既に存在していた建築物のうち、その後の改正規定に適合していない建築物をいう。
→正しい
既存不適格建築物は、建築時は適法だったものの、その後の法改正により現行法に適合しなくなった建築物を指します。

3.免震構造には、アイソレータを用いて地盤から建築物を絶縁する方法がある。
→正しい
免震構造では、アイソレータ(免震装置)を用いて建物と地盤を絶縁し、地震動を建物に伝えにくくする方法が用いられます。

  • 制振構造:建物の揺れを制御し、低減しようとする構造。建物の構造体に取り付けた制振装置(制振ダンパーなど)が、地震や風圧によって生じるエネルギーを吸収し、揺れを小さくします.
  • 免震構造:積層ゴムなどを用いて、地震力による揺れを建築物の上部構造に伝達させないようにした構造。建物と地盤の間にアイソレータ(揺れを吸収する装置)を設置して、地盤から建築物を絶縁する方法があります。
アイソレータ
出典:倉敷化工(株)

4.鉄筋コンクリート構造における鉄筋の腐食は、主にコンクリートのひび割れや中性化に起因する。
→正しい
鉄筋コンクリート構造においては、コンクリートのひび割れや中性化が鉄筋腐食の主な原因となります。
コンクリートは、アルカリ性を示すことで鉄筋を錆びから守る役割を果たしています。しかし、コンクリートがひび割れると、そこから水や酸素、二酸化炭素などが侵入しやすくなり、鉄筋に到達して腐食を進行させます。また、コンクリートの中性化も鉄筋腐食の原因となります。コンクリートの中性化とは、大気中の二酸化炭素などがコンクリートに侵入し、アルカリ性を失う現象です。アルカリ性を失うと、鉄筋を保護していた不働態皮膜が破壊され、鉄筋が錆びやすくなります。

5.構造設計に用いる鋼材の許容応力度は、引張強さを基準にして算出される。
→不適当
鋼材の許容応力度は、引張強さではなく、主に降伏点や耐力(塑性域の強度)を基準として、安全率を掛けて算出されます。引張強さは、材料が破壊する直前の最大強度であり、許容応力度の基準にはなりません。

許容応力度とは、建築物や構造物が安全に使用できる範囲内の最大応力のことです。この値を基準に、構造計算を行い、建物が安全であることを確認します。

解説動画

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