問題
建築物の荷重あるいは構造力学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1. | 等分布荷重の作用する単純梁のせん断力は、梁中央で最も大きい。 | ||
2. | 積載荷重には、物品の重量が含まれる。 | ||
3. | 柱を構造計算する場合の積載荷重は、地震力を計算する場合の積載荷重より大きく設定されている。 | ||
4. | トラス構造の部材に生じる応力は、主に軸力である。 | ||
5. | 一般区域における積雪荷重は、積雪量1cmごと1m2につき20N以上として計算される。 |

回答と解説動画
正解は(1)
1.等分布荷重の作用する単純梁のせん断力は、梁中央で最も大きい。
→不適当
等分布荷重がかかる単純梁(両端が支持によって支えられた梁のこと)において、せん断力が最も大きくなるのは支点付近であり、中央ではゼロになります。中央で最も大きくなるのは曲げモーメントです。
2.積載荷重には、物品の重量が含まれる。
→正しい
積載荷重とは、床や屋根に載る家具・人・機械・物品などの重さを含む可変的な荷重を指します。
- 水平荷重:構造物に対して横方向からかかる荷重のこと。風圧力、地震力、土圧等があります。
- 固定荷重:構造体や仕上げ材料など建物自体の自重のこと。
- 積載荷重:建築物の床や屋根などに載る人や家具などの可動する物の重さのこと。固定荷重には含まれない。
- 積雪荷重:屋根に積もった雪の重さのこと。地域の垂直積雪量や屋根の形状などによって計算される。
3.柱を構造計算する場合の積載荷重は、地震力を計算する場合の積載荷重より大きく設定されている。
→正しい
柱や基礎の構造計算に用いる積載荷重(通常時の軸力検討用)は、地震力を計算する場合に用いる積載荷重より大きく設定されています。
これは、地震力算定時には建物全体に一様に荷重が分布することは現実的でないため、積載荷重を低減して算定することが認められているためです。
たとえば住宅の居室の場合、床設計用は1800N/㎡、柱や基礎用は1300N/㎡、地震力算定用は600N/㎡など、地震時の積載荷重は通常時よりかなり小さくなっています
4.トラス構造の部材に生じる応力は、主に軸力である。
→正しい
トラス構造では、部材は節点のみで接合されていると仮定されるため、部材に生じるのは軸方向の力(引張力または圧縮力)です。
- ラーメン構造
「曲げモーメント」「せん断力」「軸方向力」という三つの主要な応力が同時に部材に生じる、剛接合による四角形フレーム構造であり、設計の自由度が高いところが特徴です。 - トラス構造
トラス構造は、三角形の骨組みを基本単位として構成された構造で、各部材は軸方向力(引張力または圧縮力)のみに抵抗することを前提としています。梁の代わりに使われることも多く、橋や大空間の屋根などに適用されます。
部材の接合はピン接合(ヒンジ接合)が原則とされ、曲げモーメントが発生しないため、構造的に軽くて強いのが特徴です。また、部材数を抑えながら長いスパンを確保できる利点もあります。
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5.一般区域における積雪荷重は、積雪量1cmごと1m²につき20N以上として計算される。
→正しい
建築基準法施行令 第86条に基づき、一般区域では積雪1cmあたり20N/m²以上の積雪荷重として取り扱うことが定められています。
(建築基準法施行令 積雪荷重)
第八十六条 積雪荷重は、積雪の単位荷重に屋根の水平投影面積及びその地方における垂直積雪量を乗じて計算しなければならない。
2 前項に規定する積雪の単位荷重は、積雪量一センチメートルごとに一平方メートルにつき二十ニュートン以上としなければならない。ただし、特定行政庁は、規則で、国土交通大臣が定める基準に基づいて多雪区域を指定し、その区域につきこれと異なる定めをすることができる。
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