問題
熱交換器に関する次の記述のうち、多管式熱交換器について述べているものはどれか。
1. | 構造的にU字管式・全固定式・遊動頭式に分類される。 |
2. | 内部に封入された作動媒体が、蒸発と凝縮サイクルを形成して熱輸送する。 |
3. | 熱交換器の中では、設置面積や荷重が小さい。 |
4. | 伝熱板の増減により伝熱面積の変更が可能である。 |
5. | 一体成形された構造のブレージング型は、汚れやすい流体の使用には向かない。 |
回答と解説動画
正解は(1)
多管式熱交換器(シェルアンドチューブ式熱交換器)は、古くから使われている代表的な熱交換器の一つです。以下にその構造や特徴、種類についてわかりやすく解説します。
- シェル(胴体)と呼ばれる太い円筒の中に、多数の細いチューブ(管)を束状に配置した構造です。
- 一方の流体はチューブの中(管側)を流れ、もう一方の流体はシェルの中(シェル側)を流れます。両者は直接混ざらず、チューブの壁を介して熱だけがやり取りされます。
- 水、油、蒸気などさまざまな流体に対応でき、加熱・冷却・凝縮・蒸発など幅広い用途に使われます。
- 大きな伝熱面積を確保できるため、高い熱交換効率が得られます。
- 構造がシンプルで信頼性が高く、低圧から高圧まで幅広い条件で使用可能です。
- 管の本数や配置を調整できるため、設計の自由度が高いです。
- 大きな流体流量を処理できるので、工場やビルの空調、発電所、化学プラントなど大規模な用途で多用されます。
- メンテナンス性も良好で、構造によっては管束を抜き出して清掃できます。
1.構造的にU字管式・全固定式・遊動頭式に分類される。
→正しい
多管式熱交換器(シェルアンドチューブ式)は、構造によって「U字管式」「全固定式(固定管板式)」「遊動頭式(フローティングヘッド式)」に分類されます。これらは管の固定方法や熱膨張への対応、メンテナンス性などに違いがあります。
2.内部に封入された作動媒体が、蒸発と凝縮サイクルを形成して熱輸送する。
→不適当
これはヒートパイプ式熱交換器の説明です。多管式はチューブとシェルで異なる流体を流し、管壁を介して熱交換します。
3.熱交換器の中では、設置面積や荷重が小さい。
→不適当
多管式熱交換器はむしろ大型で、設置面積や荷重が大きいのが一般的です。コンパクトで軽量なのはプレート式熱交換器の特徴です。
4.伝熱板の増減により伝熱面積の変更が可能である。
→不適当
これもプレート式熱交換器の特徴です。多管式は設置後に伝熱面積を変更することはできません。
5.一体成形された構造のブレージング型は、汚れやすい流体の使用には向かない。
→不適当
これはブレージング型プレート式熱交換器の特徴です。多管式熱交換器には該当しません。

各熱交換器の特徴をまとめてみました
熱交換器の種類 | おさえておくべき特徴 |
---|---|
多管式熱交換器 (シェルアンドチューブ式) |
![]() ![]() 出典:神威産業株式会社 【上記画像】胴側と管側に別々の流体を流し熱交換を行う。 |
プレート式熱交換器 |
![]() ![]() 出典:株式会社ユーアイ技研 【上記画像】流体Aと流体Bは金属プレートを伝って熱交換される。 |
ヒートパイプ式熱交換器 |
![]() ![]() 出典:株式会社DNP 【上記画像】封入された液体が熱源側(左)で加熱され蒸気となり、凝縮部(右側)で放熱される |
プレートフィン式熱交換器 |
![]() ![]() 出典:熱研産業株式会社 【上記画像】何重にも重なったプレートに複数のチューブ(熱源が通る)を通しているため伝熱面積が大きくとれる |
解説動画
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