ビル管理士 2024年(R6年) 問68  過去問の解説【空気環境の調整】

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問題

熱交換器に関する次の記述のうち、多管式熱交換器について述べているものはどれか。

1.熱交換器の中では、設置面積や荷重が小さい。
2.内部に封入された作動媒体が、蒸発と凝縮サイクルを形成して熱輸送する。
3.構造的にU字管式・全固定式・遊動頭式に分類される。
4.伝熱板の増減により伝熱面積の変更が可能である。
5.一体成形された構造のブレージング型は、汚れやすい流体の使用には向かない。
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回答と解説動画

正解は(3)

多管式熱交換器(シェルアンドチューブ式熱交換器)は、古くから使われている代表的な熱交換器の一つです。以下にその構造や特徴、種類についてわかりやすく解説します。

多管式熱交換器
  • シェル(胴体)と呼ばれる太い円筒の中に、多数の細いチューブ(管)を束状に配置した構造です。
  • 一方の流体はチューブの中(管側)を流れ、もう一方の流体はシェルの中(シェル側)を流れます。両者は直接混ざらず、チューブの壁を介して熱だけがやり取りされます。
  • 水、油、蒸気などさまざまな流体に対応でき、加熱・冷却・凝縮・蒸発など幅広い用途に使われます。
  • 大きな伝熱面積を確保できるため、高い熱交換効率が得られます。
  • 構造がシンプルで信頼性が高く、低圧から高圧まで幅広い条件で使用可能です。
  • 管の本数や配置を調整できるため、設計の自由度が高いです。
  • 大きな流体流量を処理できるので、工場やビルの空調、発電所、化学プラントなど大規模な用途で多用されます。
  • メンテナンス性も良好で、構造によっては管束を抜き出して清掃できます。

各選択肢の解説

1.熱交換器の中では、設置面積や荷重が小さい。
→ 不適当です。
これは主にプレート式熱交換器の特徴です。多管式(シェルアンドチューブ式)は構造が大きく、設置面積や重量も比較的大きいです。

2.内部に封入された作動媒体が、蒸発と凝縮サイクルを形成して熱輸送する。
→ 不適当です。
これはヒートパイプ式熱交換器の説明です。

3.構造的にU字管式・全固定式・遊動頭式に分類される。
→ 正しいです。
多管式熱交換器は、U字管式、全固定式、遊動頭式などの構造に分類されます。これが多管式の大きな特徴です。

4.伝熱板の増減により伝熱面積の変更が可能である。
→ 不適当です。
これはプレート式熱交換器の特徴です。多管式は伝熱板を増減する構造ではありません。

5.一体成形された構造のブレージング型は、汚れやすい流体の使用には向かない。
→ 不適当です。
これはブレージング型のプレート式熱交換器の特徴です。多管式熱交換器の説明ではありません。

ヘタ・レイ

各熱交換器の特徴をまとめてみました

熱交換器の種類

おさえておくべき特徴

多管式熱交換器

(シェルアンドチューブ式)

  • 太い円筒状の胴体(シェル)内に、細い多数の管(チューブ)を束状に配置した構造
  • シェル側とチューブ側で異なる流体を流し、管の壁を通して熱交換を行う
  • 蒸気-水、高温水-水などの高温・高圧の熱交換に適している
  • 構造的に「U字管式」「全固定式」「遊動頭式」に分類
    • U字管式:片側の管板にU字状に曲げた管を固定。熱膨張に強い
    • 全固定式:両端を管板に固定。構造が単純だが熱膨張に弱い
    • 遊動頭式:片側が可動で熱膨張に対応、メンテナンス性が高い
  • 設置面積や荷重が大きく、コンパクトではない
  • 伝熱面積の増減(設置後の変更)は困難
  • メンテナンス性は構造によるが、遊動頭式は特に清掃しやすい
  • 主に冷温水発生機、ボイラ、プラント、発電所など大規模設備で用いられる

出典:神威産業株式会社

【上記画像】胴側と管側に別々の流体を流し熱交換を行う。

プレート式熱交換器

  • 薄い金属板(プレート)を多数重ね、交互に高温・低温の流体を流して熱交換
  • 伝熱板には、一般にステンレス鋼板が使用される。
  • 設置面積や荷重が小さく、非常にコンパクト
  • 伝熱板の増減により、伝熱面積を設置後に変更できる
  • 分解洗浄が容易で、メンテナンス性に優れる
  • 高温・高圧にはあまり向かない(圧力・温度の制限あり)
  • 主に水-水熱交換器、食品・化学プラント、空調機の冷温水回路などに使われる
  • ブレージング型や全溶接型は、一体構造のため分解して洗浄することができないため汚れやすい流体には向かない

出典:株式会社ユーアイ技研

【上記画像】流体Aと流体Bは金属プレートを伝って熱交換される。

ヒートパイプ式熱交換器

  • 密閉管内に作動媒体(液体)を封入し、片側で蒸発・他端で凝縮することで熱を輸送
  • 構造・原理が単純で、熱輸送能力が高い(顕熱交換器)
  • 動力不要で静音、メンテナンスフリー
  • 主に空気-空気熱交換器として、排気熱の回収や電子機器の冷却などに用いられる

出典:株式会社DNP

【上記画像】封入された液体が熱源側(左)で加熱され蒸気となり、凝縮部(右側)で放熱される

プレートフィン式熱交換器

  • プレート状のフィンをチューブに圧入し、伝熱面積を大きくした構造
  • 軽量・コンパクトで、空気冷却用熱交換器(冷却コイル、加熱コイルなど)として多用される
  • 伝熱面積が非常に大きく、高効率
  • フィンの隙間に粉じんが付着しやすく、目詰まりしやすいので定期的な清掃が必要
  • 空調機の冷却コイルや加熱コイル、ガス-ガス熱交換器などで広く使用される

出典:熱研産業株式会社

【上記画像】何重にも重なったプレートに複数のチューブ(熱源が通る)を通しているため伝熱面積が大きくとれる

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