問題
空気調和における湿り空気線図上での操作に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
| 1. | 温水コイル通過後の空気は単純加熱となり、通過前後で絶対湿度は変化しない。 |
| 2. | 冷房時の室内熱負荷における顕熱比(SHF)が0.8の場合、空調機からの吹出し空気の絶対湿度は室内空気より低くなる。 |
| 3. | 暖房時に水噴霧加湿を用いる場合、給気温度は加湿前の温水コイルの出口温度と等しくなる。 |
| 4. | 還気と外気の混合状態は、湿り空気線図上において還気と外気の状態点を結んだ直線上に求められる。 |
| 5. | 冷水コイルによる冷却除湿では、バイパス空気によりコイル出口における空気の相対湿度は100%とならない。 |
回答と解説動画
正解は（3）
1. 温水コイル通過後の空気は単純加熱となり、通過前後で絶対湿度は変化しない。
→正しい
温水コイルは空気を加熱するだけの装置です。空気が温水コイルを通過すると、温度（乾球温度）は上がりますが、空気中に含まれる水蒸気の量（絶対湿度）は変わりません。湿り空気線図上では、空気の状態点が右方向に水平に移動します。
2. 冷房時の室内熱負荷における顕熱比(SHF)が0.8の場合、空調機からの吹出し空気の絶対湿度は室内空気より低くなる。
→正しい
顕熱比（SHF）は、冷房時に空調機が除去する熱のうち、温度を下げるために使われる熱（顕熱）の割合を示します。SHF=0.8ということは、全熱負荷のうち20%が潜熱（水蒸気を除去する熱）で残りが顕熱です。冷房時は、空調機が室内の水分も一部除去するため、吹出し空気の絶対湿度（含まれる水蒸気の量）は室内空気より低くなります。
空気調和（エアコン）では、空気の「温度」を変えるだけでなく、「湿度」も調整しています。このとき、温度の変化に使われる熱を「顕熱（けんねつ）」、湿度の調整に使われる熱を「潜熱（せんねつ）」といいます。たとえば、夏に部屋の温度を下げるために冷房をかけると、同時に空気中の水蒸気（湿気）も取り除かれます。この「除湿」も、実は重要なエネルギーを使って行われているのです。
そこで登場するのが「顕熱比（SHF）」という考え方です。顕熱比は、空調で使われる全体の熱量のうち、どれだけが温度調整（＝顕熱）に使われているかを示す比率です。数式で表すと「SHF = 顕熱 ÷（顕熱＋潜熱）」という形になります。たとえばSHFが1.0であれば、すべての熱が温度調整に使われ、加湿や除湿といった湿度調整は一切不要ということになります。逆にSHFが0.8なら、全体のうち80％が温度調整に、残りの20％が湿度調整、つまり加湿または除湿に使われているという意味になります。
日本の夏のように蒸し暑い気候では、冷房時に室内の湿気を取り除く必要があるため、SHFは1.0より小さくなります。一般的には0.75〜0.85程度が多く、これは全体の熱負荷のうち15〜25％が除湿に使われていることを意味しています。つまり、夏の冷房では、単に涼しくするだけでなく、湿気を取ることにもかなりのエネルギーが使われているということです。
3. 暖房時に水噴霧加湿を用いる場合、給気温度は加湿前の温水コイルの出口温度と等しくなる。
→不適当
水噴霧加湿は、温水コイルで加熱した空気に水を噴霧し、加湿する方法です。水を噴霧すると、その水が蒸発する際に空気から熱を奪います（蒸発潜熱）。そのため、加湿後の給気温度は加湿前の温水コイル出口温度よりも下がります。
4. 還気と外気の混合状態は，湿り空気線図上において還気と外気の状態点を結んだ直線上に求められる。
→正しい
還気（室内の空気）と外気を混合する場合、混合後の空気の状態は、湿り空気線図上で還気と外気の状態点を結んだ直線上に位置します。混合比（還気と外気の割合）に応じて、直線上の位置が決まります。
5. 冷水コイルによる冷却除湿では，バイパス空気によりコイル出口における空気の相対湿度は100%とならない。
→正しい
冷水コイルによる冷却除湿は、空気を冷やして露点以下にし、水分を除去する方法です。通常、コイルを通過した空気は相対湿度100%近くになります。しかし、バイパス空気（コイルを素通りする空気）がある場合、コイル出口の空気は完全に飽和（100%）にはなりません。これは、バイパス空気が混ざることで、全体の相対湿度が下がるためです。
ヘタ・レイ下の解説動画では、湿り空気線図を使いながら解説しているのでわかりやすいはずです。
解説動画
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