問題
アスベストに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1. | 合成された化学物質である。 | ||
2. | 胸膜中皮腫の潜伏期間の多くは、20~50年である。 | ||
3. | 吸引すると肺の線維化を生じさせる。 | ||
4. | 肺がんに対して、アスベストばく露と喫煙の相乗作用が示唆されている。 | ||
5. | 中皮腫や肺がんの発症の危険度は、アスベストの累積ばく露量が多いほど高くなる。 |
回答と解説動画
正解は(1)
1.合成された化学物質である。
→不適当です。
アスベストは「天然に産出する繊維状のケイ酸塩鉱物」の総称です。
クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)などの種類があり、いずれも地中から採掘される鉱物です。
人工的に合成された化学物質ではなく、古代から耐熱性・耐薬品性・絶縁性などに優れていることから、建材や断熱材、摩擦材など多くの用途で使われてきました。
2.胸膜中皮腫の潜伏期間の多くは、20~50年である。
→正しいです。
胸膜中皮腫は、アスベスト曝露後、発症までに20~50年という非常に長い潜伏期間を持つのが特徴です。
これは、アスベスト繊維が体内に入ると、長期間にわたり組織にとどまり、細胞のがん化をゆっくりと進行させるためです。
そのため、アスベストの使用が禁止された現在でも、過去に曝露した人々の間で新たな発症例が続いています。
この「潜伏期間の長さ」も試験で頻出です。
3.吸引すると肺の線維化を生じさせる。
→正しいです。
アスベスト繊維を吸い込むと、肺の奥深く(肺胞)まで到達し、慢性的な炎症を引き起こします。
その結果、肺組織が線維化(硬くなってしまう)し、「アスベスト肺(石綿肺)」という職業性じん肺疾患を発症します。
この病気は進行性で、咳や息切れ、呼吸困難などの症状が現れ、重症化すると日常生活に大きな支障をきたします。
4.肺がんに対して、アスベストばく露と喫煙の相乗作用が示唆されている。
→正しいです。
アスベストばく露だけでも肺がんのリスクは高まりますが、喫煙者の場合、そのリスクはさらに著しく増加します。
これは、アスベスト繊維による慢性的な刺激と、タバコの有害物質が相互に作用し、細胞のがん化を促進するためです。
5.中皮腫や肺がんの発症の危険度は、アスベストの累積ばく露量が多いほど高くなる。
→正しいです。
アスベストによる健康被害のリスクは、「どれだけの量を、どれだけ長い期間吸い込んだか(累積ばく露量)」に比例して高まります。
特に、建設現場や工場などで長期間アスベスト粉じんにさらされた人ほど、中皮腫や肺がんの発症率が高くなります。
また、短期間でも高濃度ばく露があればリスクは増大します。
この「累積ばく露量と発症リスクの関係」は、職業性疾患予防や法規制の根拠にもなっています。
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