問題
熱中症に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1. | 熱けいれんは、大量に発汗した際、水分のみを大量に摂取することによって起きる。 | ||
2. | 熱疲労では、大量の発汗により体内の水分、塩分が不足し、臓器の機能低下が起きる。 | ||
3. | 熱失神はもっとも重い熱中症であり、体温は異常に上昇する。 | ||
4. | 皮膚疾患や重度の日焼けのときには発汗作用は低下するので、注意が必要である。 | ||
5. | 熱射病の治療においては、冷やしすぎに注意する必要がある。 |
回答と解説動画
正解は(3)
1.熱けいれんは、大量に発汗した際、水分のみを大量に摂取することによって起きる。
→ 正しい
熱けいれんは、激しい運動や高温環境で大量に汗をかいた後、水分だけを補給して塩分(ナトリウム)を補給しない場合に起こります。
汗には水分だけでなく塩分も含まれているため、水だけを飲むと血液中のナトリウム濃度が低下し、筋肉の異常収縮(けいれん)が発生します。
特にスポーツ現場や屋外作業でよくみられる症状で、塩分補給の重要性を示す代表的な例です。
2.熱疲労では、大量の発汗により体内の水分、塩分が不足し、臓器の機能低下が起きる。
→ 正しい
熱疲労は、発汗による脱水と塩分喪失が続くことで、全身のだるさ、頭痛、吐き気、血圧低下、めまいなどが現れます。
体温の上昇もみられますが、意識障害はありません。臓器への血流が減少し、放置すると重症化して熱射病につながる危険性があります。
3.熱失神はもっとも重い熱中症であり、体温は異常に上昇する。
→ 不適当
熱失神は、暑い環境で長時間立っていたり急に立ち上がったりしたとき、皮膚の血管が拡張して血圧が下がり、一時的に脳への血流が減ることで起こります。
一時的なめまいや失神(気を失う)を起こしますが、体温の異常上昇はみられません。
失神と聞くと重そうな症状なイメージですが、熱中症の中では最も軽症の部類です。
4.皮膚疾患や重度の日焼けのときには発汗作用は低下するので、注意が必要である。
→ 正しい
皮膚が広範囲に傷ついたり、重度の日焼けをしていると、発汗機能が低下し、体温調節がうまくできなくなります。
そのため、熱中症のリスクが高くなり、特に高齢者や乳幼児、皮膚疾患のある人は注意が必要です。
5.熱射病の治療においては、冷やしすぎに注意する必要がある。
→ 正しい
熱射病では、できるだけ早く体温を下げることが最優先ですが、冷やしすぎて低体温になると逆に危険です。
熱中症の分類
分類 | 特徴・症状 | 原因・メカニズム |
---|---|---|
熱失神 | 皮膚血管の拡張による血圧低下、一過性の意識消失(失神やめまい) | 高温下で皮膚血管が拡張し、脳への血流が一時的に減少する。 |
熱けいれん | 筋肉の痛みを伴うけいれん | 大量発汗後に水分のみを補給し、血液中のナトリウムが低下(低ナトリウム血症)するため。 |
熱疲労 | 全身倦怠感、脱力、めまい、頭痛、吐き気、下痢など | 大量発汗による脱水と塩分不足、全身的な循環不全。 |
熱射病 | 体温上昇による中枢神経系機能障害(意識障害、けいれん、体温40℃以上など) | 体温調節中枢の機能障害により自力での体温調節ができず、深部体温が急激に上昇する。 |
日射病 | 熱射病のうち、太陽光が主な原因となるもの | 直射日光や強い輻射熱による体温上昇。 |
解説動画
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