ビルの給水方式を紹介【直圧・増圧・高置水槽】
給水方式の種類は、ビルメンとしてビルの管理をするなら絶対に知っておく必要があります。
ここでは代表的な給水方式を5つ紹介します。
ビル管理試験でも問われる範囲なので、勉強中の方もしっかり覚えてくださいね!
直結直圧方式
私の経験上、直結直圧方式のビルは管理したことがありませんが、他の方式と区別するために用語はおさえておいてください。
シンプルに言えば一般家庭の水道と同じです。
水道局から送られてくる水の圧力で建物内に水を供給するため、ポンプなど機械的な設備を必要としません。
この方式の欠点は、建物の階数が高くなると水を運べなくなる点です。
一般的には2階程度の建物で利用されている方式ですが、水道局からの距離や圧力によっては5階程度まで揚げられる場合もあります。
水は蛇口から出てくるまで密閉された水道管の中を取ってくるため、大気に水が触れることが無く衛生的です。
この方式が使えない高さの建物は、次に紹介する方式を選択しなくてはいけません。
- 大気に水が触れないため衛生的
- 機械などが不要なので経済的
- 階数が高い建物には使えない
直結増圧方式
先ほど紹介した直結直圧方式に、増圧ポンプを追加したものが直結増圧方式です。
主に小型のビルなどで使われており、直圧方式ではビルの階数が高くなると上まで水を運べませんでしたが、増圧ポンプを使うことによって10階程度の高さまで水を運ぶことが出来るようになります。
また、直結直圧方式と同様に蛇口から水を出すまで、密閉された水道管の中を通ってくるため、水は大気に触れず衛生的です。
ただし、配水管が負圧になった場合に水が配水管に逆流する場合があるので、逆流防止装置を設ける必要があります。
- 大気に水が触れないため衛生的
- 増圧ポンプが必要になるので直結方式と比べお金がかかる
- 逆流防止装置が必要
高置水槽方式
上図のように、水道局からの水を一旦受水槽に貯めてから、ポンプ(揚水ポンプ)でビルの屋上に設置している高置水槽まで運びます。
高置水槽に貯められた水は重力による自然落下で、蛇口を回すだけで吐水されるようになります。
高置水槽内の水位が低下すると、高置水槽内の水位が一定レベルに増えるまで揚水ポンプが自動的に運転します。
ちなみに、受水槽内の水位はボールタップで制御しています。
高置水槽方式は、重力による自然落下で水を供給するため水圧・水量が安定しています。
しかし、受水槽・高置水槽・揚水ポンプと必要な設備が多く、しかも2つの水槽は大気に触れる状態にあるため汚染されるリスクがあります。(もちろん水槽には鍵付きの蓋をつけています)
- 重力による自然落下で水を供給するため水圧・水量が安定
- 水が大気に触れる状態で保存されるため汚染リスクがある
- 必要な設備が多くお金がかかる
圧力水槽方式
圧力水槽方式に必要な設備は、「受水槽」「給水ポンプ」「圧力水槽」です。
水道局から送られてくる水を、一旦受水槽に貯めます。
その後、給水ポンプを使って圧力水槽に水を送り、圧力水槽内の空気を加圧します。
圧力水槽内は水と加圧された空気で満たされているため、上図のように蛇口を回すと加圧された空気で水が押し出されて吐水される構造になっています。
圧力水槽内の圧力が低下すると、給水ポンプが運転を開始して再び圧力水槽内を加圧します。
圧力水槽方式は、高置水槽が不要なため経済的ですが圧力が不安定になりやすく現在はあまり使われていません。
- 圧力水槽が必要だが、高置水槽が不要なため経済的
- 圧力が不安定になりやすく現在はあまり使われていない
- 受水槽内の水は大気に触れる状態にあるので、汚染リスクはある
ポンプ直送方式
ポンプ直送方式は直結増圧方式に受水槽を追加したような給水方式です。
大型のビルなどで利用されており、受水槽に一旦貯めた水を加圧ポンプを使って各階に運びます。
水を使用する頻度が多くなるとポンプの運転・停止頻度が多くなってしまうので、小型の圧力水槽を同時に設置していることが多いです。
現在の受水槽を設置している建物では主流の給水方式となっています。
- 高置水槽が不要なため経済的
- 現在の主流
- 受水槽内の水は大気に触れる状態にあるので、汚染リスクはある
- 直結増圧方式と同様に負圧になった場合の逆流対策が必要
受水槽や高置水槽を設置するメリット・デメリット
受水槽や高置水槽のことをまとめて「貯水槽」と呼びますが、この貯水槽を設置するメリット・デメリットを最後に紹介したいと思います。
受水槽や高置水槽のメリット
貯水槽を設置する最大のメリットは、水道局側のトラブルで断水した場合でも、建物内に水を供給できる点です。
高置水槽内に水が入っていれば、そのまま自然落下で水を使えますし、受水槽内に水があればポンプを運転して水を供給出来ます。(ポンプを運転するため電気は必要です)
受水槽や高置水槽のデメリット
水道法により、貯水槽の設置者には、給水設備を適切に管理する責任があります。
10トンを超える水槽を設置している場合は、年に一回以上の水質検査と水槽内の清掃が義務付けられているため、維持管理のための費用が増えてしまいます。
また、月に1回は貯水槽の内外を目視点検したり、水を消毒するための残留塩素の測定も必要です。
このような維持管理を適切に行っていても、思わぬ事故により水が汚染される可能性はあります。
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