問題
ヒトと水に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
1. | 通常の状態で、水が最も多く排泄されるのは尿であり、その次は皮膚からの蒸泄である。 | ||
2. | 成人の体内の水分量は、体重の約80%である。 | ||
3. | 水分欠乏が体重の5%以上で、喉の渇きを感じる。 | ||
4. | ヒトが生理的に必要とする水分量は、成人の場合、1日当たり約3リットルである。 | ||
5. | 体内では細胞内液より細胞外液の方が多い。 |
回答と解説動画
正解は(1)
1. 通常の状態で、水が最も多く排泄(せつ)されるのは尿であり、その次は皮膚からの蒸泄である。
→最も適当です。
成人が1日に摂取・排泄する水分バランスを考えると、最も多く排泄されるのは尿です(約1,000~1,500mL)。
次に多いのが「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」と呼ばれる皮膚や呼気からの水分蒸発(約900mL)です。
不感蒸泄は発汗とは異なり、気づかないうちに失われる水分で、皮膚表面や呼吸によって常に体外へ放出されています。
2. 成人の体内の水分量は、体重の約80%である。
→不適当です。
成人男性の体内水分量は体重の約60%、女性で約55%が標準です。
80%という値は新生児や乳児の体内水分割合であり、成長とともに低下します。
体重75kgの成人男性なら、約45kgが水分という計算になります。
この「体重の約60%」という数字は、脱水や水分補給の目安を考える際にも大切な基礎知識です。
3. 水分欠乏が体重の5%以上で、喉の渇きを感じる。
→不適当です。
喉の渇きは、体重の約1%の水分が失われた時点で感じ始めます(例:体重70kgなら約700g=700mLの水分減少)。
体重の5%以上の水分欠乏になると、すでに脱水症状が進行し、めまい・頭痛・意識障害などの危険な状態です。
熱中症や脱水症予防の現場では「喉が渇く前に水分補給を」と指導されるのはこのためです。
水分欠乏率 | 主な症状・影響 |
---|---|
1% | のどの渇き |
2% | 強い渇き、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮 |
4% | 動きのにぶり、皮膚の紅潮、いらいら、疲労、嗜眠、吐気、感情不安定 |
6% | 手足の震え、熱性抑うつ症昏迷、頭痛、体温上昇、脈拍・呼吸数増加 |
8% | 呼吸困難、めまい、チアノーゼ、言語不明瞭、精神錯乱 |
10~12% | 筋けいれん、平衡機能失調、失神、舌の腫張、循環不全、腎機能不全 |
15~17% | 皮膚がしなびる、飲み込み困難、目の前が暗くなる、目がくぼむ、排尿痛、聴力損失、皮膚感覚鈍化、舌のしびれ、眼瞼硬直 |
18% | 皮膚のひび割れ、尿生成の停止 |
20% | 死亡 |
4. ヒトが生理的に必要とする水分量は、成人の場合、1日当たり約3リットルである。
→不適当です。
成人が1日に必要とする水分量は、一般的に約1.5Lです。
5. 体内では細胞内液より細胞外液の方が多い。
→不適当です。
体内の水分は、約2/3が「細胞内液」、約1/3が「細胞外液」です。

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