ビル管理士 2024年(R6年) 問99  過去問の解説【建築物の構造概論】

内容に誤りがあった場合は、お手数ですがコメント欄で教えて頂けると助かります。

問題

輸送設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.ロープ式エレベーターは、走行機の速度制御が広範囲にわたって可能である。
2.建築物に使用されるエレベーターの多くは、JIS規格に準拠したものである。
3.エレベーターの「火災時管制運転装置」とは、火災時にエレベーターを最寄り階まで自動運転するものである。
4.エスカレーターの安全装置は、利用者側の安全対策機能と機械側の異常対策機能に分けられる。
5.小荷物専用昇降機の天井高さは、1.2m以下と定められている。
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回答と解説動画

正解は(3)

1. ロープ式エレベーターは、走行機の速度制御が広範囲にわたって可能である。
→ 正しい
今回の問題では関係無いですが、エレベーターにはロープ式油圧式があります。
ロープ式エレベーターは、巻上機(モーター)でロープを巻き取ったり緩めたりしてかごを昇降させる方式です。インバータ制御などにより、速度の加減速や停止位置の調整が柔軟にできるため、速度制御の幅が広く、省エネルギーや快適な乗り心地の実現が可能です。

一方、油圧式エレベーターは、電動ポンプで油を加圧し、その油圧でジャッキ(シリンダーとプランジャー)を伸縮させてかごを昇降させる方式です。油圧式は構造上、建物上部に機械室が不要で、上部に荷重をかけたくない場合や、大きな積載量が必要な場合に適しています。また、低層建物や工場・倉庫などで多く採用されています。
ただし、油圧式エレベーターは昇降行程(移動できる高さ)や速度に限界があり、ロープ式のような高速運転や長距離運転には向いていません。また、油圧ポンプの流量制御やVVVFインバータ制御によってある程度の速度調整は可能ですが、ロープ式ほど広範囲な速度制御や高効率な運転は難しいのが一般的です。

以下の画像はロープ式と油圧式の参考資料です。(出典:東芝)
色々と機器の名称が書いてありますが、ビル管試験において各部品の仕組みなど覚える必要はなく、油圧式よりロープ式のほうが汎用性が高いと理解しておけば十分だと思います。

ロープ式
油圧式

2. 建築物に使用されるエレベーターの多くは、JIS規格に準拠したものである。
→ 正しい
日本国内で普及しているエレベーターの多くは、日本工業規格(JIS)に準拠して設計・製造されています。安全性や性能、寸法などが規格化されているためです。

3. エレベーターの「火災時管制運転装置」とは、火災時にエレベーターを最寄り階まで自動運転するものである。
→ 不適当
火災時管制運転装置は、火災が発生した際にエレベーターを最寄り階ではなく、避難階まで自動運転し、ドアを開けて乗客を避難させるための装置です。
「最寄り階」とは、エレベーターが停止中に一番近い階を指しますが、火災時には必ずしも安全な階とは限りません。
そのため、火災時管制運転装置は、あらかじめ設定された安全な階(避難階)まで運転し、そこでドアを開放して利用者の避難を促します。
なお、問題文にあるような最寄り階に停止するケースは、地震時や停電時となります。

避難階(ひなんかい)とは、建物から直接地上へ避難できる階のことです。通常は1階が避難階となりますが、地形や建物の構造によっては、2階や地下が避難階になることもあります。

4. エスカレーターの安全装置は、利用者側の安全対策機能と機械側の異常対策機能に分けられる。
→ 正しい
エスカレーターには、利用者の転倒や挟み込みを防ぐための安全装置(非常停止ボタン、スカートガードなど)と、機械の異常(チェーン切れ、過負荷など)を検知して停止させる装置が備わっています。これらは利用者側と機械側の両面から安全を確保しています。

エスカレーター非常停止ボタン

5. 小荷物専用昇降機の天井高さは、1.2m以下と定められている。
→ 正しい
小荷物専用昇降機は、人が乗らずに荷物だけを運ぶための小型の昇降機です。
エレベーターに似た構造を持ちますが、主に飲食店や病院、オフィスなどで、料理や書類、書籍などの軽量な荷物を階間で運ぶために利用されます。建築基準法では、かごの床面積が1㎡以下、天井の高さが1.2m以下のものと定義されています。

出典:アイニチ株式会社

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