ビル管理士 2022年(R4年) 問48  過去問の解説【空気環境の調整】

内容に誤りがあった場合は、お手数ですがコメント欄で教えて頂けると助かります。

問題

熱放射に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.白色ペイントは、光ったアルミ箔(はく)よりも長波長放射率が小さい。
2.物体表面から放射される単位面積当たりの放射熱流は、絶対温度の4乗に比例する。
3.同一温度の物体間では、長波長放射に関し、放射率と吸収率は等しい。
4.一般的なアスファルトの長波長放射率は、約0.9である。
5.常温物体から射出される電磁波は、波長が10μm付近の赤外線が主体である。
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回答と解説動画

正解は(1)

1.白色ペイントは、光ったアルミ箔よりも長波長放射率が小さい。
→ 不適当
白色ペイントの長波長放射率は約0.9、光ったアルミ箔は約0.1です。白色ペイントの方が放射率が大きく、熱をよく放射します。

2.物体表面から放射される単位面積当たりの放射熱流は、絶対温度の4乗に比例する。
→ 正しい
ステファン・ボルツマンの法則により、放射熱流は絶対温度の4乗に比例します。

ステファン・ボルツマンの法則は、物体の温度が上昇すると、その物体から放射される熱エネルギーの量が指数関数的に増加することを意味します。
放射エネルギー = 放射率 × 定数 × 温度の4乗
(温度の4乗に比例するので、温度の影響がきわめて大きい)

3.同一温度の物体間では、長波長放射に関し、放射率と吸収率は等しい。
→ 正しい
キルヒホッフの法則により、同一温度の物体間では放射率(ε)=吸収率(α)となります。

4.一般的なアスファルトの長波長放射率は、約0.9である。
→ 正しい
アスファルトの長波長放射率は0.9程度で、高い熱放射特性を持ちます。

5.常温物体から射出される電磁波は、波長が10μm付近の赤外線が主体である。
→ 正しい
常温(約20℃)の物体は、10μm付近の赤外線を主に放射します。

選択肢3に関する補足

キルヒホッフの法則は、熱放射に関する重要な法則です。特に、同じ温度の物体同士の間での熱のやりとりについてのルールを表しています。
簡単な例で説明:
同じ温度のコップAとコップBを想像してください。
コップAは黒く塗られていて(放射率0.9)、コップBは光ったアルミ箔で覆われています(放射率0.1)。

このとき

コップAは熱をよく放射します(放射率0.9)。
コップBは熱をあまり放射しません(放射率0.1)。
しかし、両方のコップが同じ温度の場合:
コップAは熱をたくさん放射しますが、同時に周りから熱をたくさん吸収します(吸収率0.9)。
コップBは熱を少ししか放射しませんが、周りから熱を少ししか吸収しません(吸収率0.1)。
つまり、放射率と吸収率は同じ値になるのです!

同じ温度の物体同士では、熱の出入りがバランスします。
放射率(ε):どれだけ熱を放射するか(0~1)。
吸収率(α):どれだけ熱を吸収するか(0~1)。
キルヒホッフの法則:同じ温度なら ε = α!

ポイント

以下の表は材料ごとの放射率と日射吸収率を一覧にしたものです。選択肢1や4は頻出問題なので、この表を覚えておけば得点できます。

材料名放射率
(長波長放射率)
日射吸収率
白色プラスター0.90.1
白色ペイント0.90.2
黒色ペイント0.90.9
アスファルト0.90.9
木材(松板)0.60.9
新しい亜鉛鉄板0.20.74
酸化した亜鉛鉄板0.30.8
光ったアルミ箔0.10.1
ヘタ・レイ

覚えるのが大変な場合は、光ったアルミ箔が0.1、黒系材料は0.9とだけでも覚えておけば消去法で正解できるかもしれません。
また、別の過去問(2021年問48)では以下のような図を用いた問題も出題されています。
この図は、上記表に掲載されている一部の材料に関する数値を直感的に見やすくまとめています。

日射吸収率と長波長放射率まとめ

日射吸収率とは?

  • 日射吸収率は、「太陽の光(主に可視光線や近赤外線)を、物体がどれだけ吸収するか」を表す割合です。
  • 太陽光の波長(約300~2,500nm)の範囲で、値が大きいほど太陽の熱をよく吸収し、値が小さいほど吸収しない(反射や透過が多い)ことを意味します。
  • たとえば、黒い屋根やアスファルトは日射吸収率が高く、白い壁やアルミ箔は低いです。

長波長放射率とは?

  • 長波長放射率は、「物体が自分の熱を赤外線(主に10μm付近)として外に放射する割合」です。
  • これは、物体自体が温かいときに放出する赤外線(熱放射)のしやすさを示します。
  • 値が大きいほど熱をよく放射し、値が小さいほど熱を放射しにくい(熱をためこみやすい)です。
  • たとえば、アスファルトや白色ペイントは放射率が高く、光ったアルミ箔は低いです。

ポイントまとめ

  • 日射吸収率:太陽の熱をどれだけ吸収するか(昼間の熱のたまりやすさに関係)
  • 長波長放射率:自分の熱をどれだけ外に放射するか(夜間の冷えやすさ、保温性に関係)
  • この2つは材料や色によって違い、必ずしも同じ値ではありません

  • アスファルト・黒系の材:日射吸収率も放射率も高い(よく熱を吸収し、よく熱を放射する)
  • 白色ペイント:日射吸収率は低いが、放射率は高い
  • 光ったアルミ箔:日射吸収率も放射率も低い(熱を吸収しにくく、放射もしにくい)

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